猫を閉じこめる夢

ホテルとか学校の校舎のような建物に、これから五年間、猫を閉じ込めておく、という儀式のようなものがあり僕は呼ばれている。建物の周りにたくさんの関係者や見物人が集まってガヤガヤしている。金色の毛並みの美しい猫で、大きく、雌のライオンみたいに見えるそいつは、なかなか建物の中に収まろうとしないので、関係者は困っている。そういうときのために僕は呼ばれていて、僕は猫を操る言葉を知っているのだ。じゃあお願いします、と頭の禿げかかった理事長が僕に情けない顔をして言うので、僕の口座に振り込まれるギャラが相当なものであるとわかる。青い円筒形の壇上に立ち、猫を引き寄せて僕は言う。
「ワーと呼ばれるものよ、これからはコルネとして」
僕がそう言うとすぐに猫の身体に変化が現れ始める。毛がピンクになり、四本の脚は長く伸び始め、身体が高くなっていく勢いでコルネは建物に吸い込まれていく。狭い部屋に収まったコルネが飼育係の隣で窮屈そうにじっとしているのが遠くから見えて、僕は正しいことをしたのだろうかと考えてしまう。