太った黒い猫の夢

四階建てのアパートの階段を上って行く。何か上らなくてはいけない理由があるようだ。二階から三階へと続く階段の途中に、たくさんの猫がいるのを見つける。その猫の集団のリーダーらしい太った黒い猫が、ずっと僕を睨んでいる。僕はなるべく自然に彼の気に触れないように、ゆっくりと階段を上ろうとする。でも彼は僕を見逃さない。彼は僕の肩に片足をかけて、僕の目を見て喋る。
「あんた、うちのロッキーを知らないかい?」
僕は猫に噛まれたり、引っかかれたりするのではないかと心配していたので、ほっとして、そう言えばさっき猫の死体を見たけどあれがロッキーだったのかもしれない、と思い当たり、彼に伝える。
「いや、それはロッキーじゃないな。ロッキーは六匹なんだ」
そうか、ロッキーは六匹なのか、じゃああの僕が見た車に轢かれた猫はロッキーじゃなかったんだ、と僕は思う。その間中ずっと、茶色の猫が僕のスーツを爪で引っかいて、ボロボロにしてしまおうとしている。僕はせっかくのスーツを引っかくのはやめて欲しいと思うが、身体を引っかかれるよりはましだ、と考えている。