プールサイドの夢

巨大な屋内プールのプールサイド。プールの水はほとんど蒸発している。そのためにプールの底に群れをなす黒い塊が露わになってしまっている。ヘビに似た生き物のようでもあり、まったく生き物ではないようにも見えるそれは、触れるとぼろぼろに壊れてしまいそうで、プールの底に据えたお灸が燃え尽きた、といった風でもある。ぼくはプールサイドを通って駅へ向かう人の列について歩きながら、そろそろプールを水で満たしたほうがいいのではないかと思う。プールサイドは延々と駅のほうまで続き、そのどこからも黒い塊が何かの死骸の山のように見えていて、「早くこれをどうにかしなければ」という焦りにも似たような気持ちを見るものに与える。やがて、誰かがどこかにあるスイッチを押して、底から湧きあがるようにしてプールが水で満たされはじめた。黒い塊は水嵩が増すにつれて浮き上がりながら、ゆっくりとまず水分を吸収し、それからいっせいに水の中を泳ぎはじめる。