猫の天国

深夜の路上でおじさんがねむっていた。そのとなりで、まるでおじさんの真似をするみたいにして黒猫がねむっていた。そっくり、おなじ格好だった。いまどき、ほんものの親子だって、あんなふうに並んでねむったりしない。きっとかれらは仲良しなのにちがいなかった。だって、黒猫はおじさんのそばで、ほんとうに安心してねむっていたからだ。

わたしは散歩のはじめのほうにねむっているかれらをみかけて、散歩の終わりに、もういちどねむっている姿をみてきた。わざわざそのために遠回りして。黒猫はさっきより、もっとおじさんのそばでねむっていた。

あんなふうにして猫と並んでねむることができるひとは、きっと天国に行くことができるにちがいないとわたしはおもう。もしかしたら、それは猫の天国かもしれないけれど。